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ヴォイスプロテーゼの突出と脱落 –
シャント孔に感染が起こると、ヴォイスプロテーゼが突出し
たり、その結果自然に脱落することが、しばしば起こります。気管への脱落を防ぐために、プロテ
ーゼの抜去が必要になります。プロテーゼを抜去すると、シャント孔が自然に閉鎖することがあ
ります。新たにプロテーゼを留置する場合は、シャント孔を改めて形成しなければなりません。
組織損傷 –
ヴォイスプロテーゼが短すぎたり長すぎたりする場合や、気管カニューレ、ストマボ
タン、または指でプロテーゼを頻繁に食道壁に押しつける患者の場合、シャント孔以外に、気管
壁や食道壁の組織を損傷させることがあります。損傷がひどくならないように、組織の状態を定
期的に確認してください。
弁からの漏れ –
ヴォイスプロテーゼから漏れが生じる理由としては
• 弁 座 や 弁 の 周 囲 に カ ン ジ ダ 菌 が 増 殖 す る と 、 弁 が 完 全 に 閉 じ
な く な り 、プ ロ テ ー ゼ か ら 液 体 が 漏 れ 出 す 原 因 と な り ま す 。
シャント発声において、これは普通のことで、プロテーゼの交換時期と考えてください。
• 嚥下する際、咽頭食道部位の陰圧が生じます。これを調べるために、嚥下する時にヴォイス
プロテーゼの弁が開くかを確認してください。
ヴォイスプロテーゼ周囲の漏れ –
ヴォイスプロテーゼ周囲から一時的に漏れが生じることが
ありますが、自然に止まります。漏れの最大の原因は、プロテーゼのフランジ間が長すぎること
です。短いプロテーゼに交換すると、漏れは解決します。シャント孔にあった長さのプロテーゼ
に交換しても漏れが止まらない場合には、同部位周辺の組織に何らかの問題(胃食道逆流症
や甲状腺機能異常など)があると考え、治療してください。シャント孔が拡張しすぎてプロテー
ゼを保持する力が弱まっている場合は、コラーゲン注入といった従来の対処法、もしくはプロ
テーゼを一時的に抜去することを検討してください。こういった方法を行っても漏れが止まら
ないようであれば、シャント孔を縫合して閉鎖するといった方法が必要になることもあります。
2. 使用方法
本書中に参照用として番号が記載されている図は、同梱の図表をご覧ください。
各手技について、各セクション見出しの下に記載されたリンクから動画を見ることもできます。
注意:
動画は取扱説明書の全内容や添付文書に代わるものではなく、これらを説明するもの
でもありません。必ず取扱説明書の全内容をご一読ください。動画は、取扱説明書を一読した
のち、手技に対する理解をさらに深めることのみを目的としています。
2.1 準備
シャント孔形成の前に、留置するヴォイスプロテーゼのサイズと外径を必ず決めておいてくださ
い。どういったサイズと外径のプロテーゼを選択するかは、患者の解剖学的特徴、手術方法、執
刀医の判断によります。
2.2 手術の注意点
本製品の滅菌包装に破損などがないか確認してください。包装が破損していたり、既に開封され
ていたりする場合には使用しないでください。非滅菌製品は感染を引き起こすことがあります。
2.2.1 一期的シャント孔形成とヴォイスプロテーゼの留置
www.atosmedical.com/primary-puncture
1. 喉頭を摘出して気管孔を形成した後、咽頭を縫合する前に、咽頭・食道の切開部位からPharynx
Protectorを挿入します(図2.1)。
2. 気管内壁の、シャント孔を形成する部位に触れて、その部位が正しい位置か確認します。気管
内壁に触れると、Pharynx Protector前面の、斜めになった開口部(手技によっては上部の割
れ目)を触知します(図2.2)。
3. シ ャント 孔 の 形 成 部 位 に 穿 刺 針 を 正 確 に 挿 入し( 気 管 孔 の 外 縁 か ら 約 8
~10 mmの 位置 )、針の先 端がPhar ynx Prote c torの内腔に入るまで挿入し
続 けます( 図 2 . 3)。気 管内チューブが 挿入されている 場 合、シャント孔を 適 切
に拡張してヴォイスプロテーゼを留置する妨げになるようであれば、抜去してくだ
さい。
4. 穿刺針の針基からGuidewireを挿入します。穿刺針にGuidewireを通し、Pharynx Protector
の内腔から約20 cm出るまでGuidewireを押し出します(図2.4)。
警告:
Pharynx Protectorの内腔からGuidewireが出ているか、必ず確認してください。さ
もなければ、粘膜(下)を損傷する恐れがあり、手順をやり直す必要があります(「有害事象
とその防止策について」、「シャント孔形成セットの再装填」の章をご覧ください)。
5. 穿刺針を抜き取ります(図2.5)。
注意:
Pharynx Protectorを外す前に、必ず穿刺針を抜き取ってください。先に穿刺針を抜い
ておかないと、食道の組織を損傷させる恐れがあります。
6. Pharynx Protectorを外します。Guidewireのみを残して、次の手順に進みます(図2.6)。
7. 食 道 側 か ら 延 び る G u i d e w i r e を 、先 の 狭 い シ ャ ン ト 孔 形 成 用
ダ イ レ ー タ ー の 先 端 に 挿 入 し 、 同 ダ イ レ ー タ ー の 出 口 か ら 約
10 cm出るまでGuidewireをさらに挿入します(図2.7)。
8. Guidewireの先端をつまんで、出口の隣にある穴に挿入します(図2.8)。
9. シャント孔形成用ダイレーターの先の狭い先端から出ているGuidewireを引いて、しっかりと
固定できているか確認します(図2.9)。
10. シャント孔 の 形 成 部 位 から出ているG u i d e w i r e を 慎 重に 、持 続 的 にスムーズ
に引いて、シャント孔を拡張させます。拡張する際には、気管と食道の組織を支えて
(指2本で抑えるなどして)、組織にかかる負荷を和らげてください。Guidewireは
シャント孔形成用ダイレーターに近い部分をしっかりつかむと、動きを調整しやすくなりま
す(図2.10)。
注意:
シャント孔を拡張しながらヴォイスプロテーゼを留置する際には、気管壁と食道壁に
過度な負荷をかけないように、上下左右に動かすことなくまっすぐ手前に引くようにしてくだ
さい。
11. 動きを止めずスムーズに、シャント孔からガイドワイヤー、シャント孔形成用ダイレーター、
シャント孔形成用ダイレーターのループを慎重に引きます。シャント孔形成用ダイレーター
のループがボイスプロテーゼの気管側フランジ上で引かれてシャント孔を通過すると、ルー
プは同フランジを折り畳みます。ループが気管側フランジを解放すると、同フランジは気管
内で広がります(図2.11)。
シャント孔形成用ダイレーターのループによって気管側フランジが解放されたら、直ちに引く
のをやめてください。気管側フランジが完全に広がらない場合は、無鉤止血鉗子を2本利用
して、何度か回して広げてください。
12. 無鉤止血鉗子でヴォイスプロテーゼの気管側フランジをつかみ、プロテーゼを正しい位置に
回転させて、セーフティストラップを切ります(図2.12)。
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